札幌高等裁判所 昭和28年(う)127号 判決
被告人は原判示第五の腕時計一箇は遺失物横領であると主張するのであるが、原判決挙示の河村梧郎の被害届及び被告人の司法警察員に対する第一回供述調書によると、右腕時計は同人が宿泊した越中屋旅舘(舘主小木田龜太郎)にて入浴の時脱衣場に置き忘れたもので、右河村梧郎の事実上の支配を離脱したものであるけれども、舘主の事実上の支配の及ぶ旅舘屋内入浴場の脱衣場に現存したものであるから、舘主の支配内に属するものというべく、従つて遺失物横領を以て論ずべきでなく、原判決が刑法第二百三十五条の窃盗罪に問擬したのは正当であつて原判決に事実の誤認はない。論旨は理由がない。